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大阪高等裁判所 昭和33年(ネ)185号 判決

事実

姉A弟Bの共有にかかる土地を、Bが所有者兼Aの代理人として、Xに売買契約を締結して代金を受領したが、所有権移転登記に付ては将来Xが他人に転売したときには、中間省略登記をなすことを承諾した。そこでXから土地を買受けたYがABに対し中間省略による所有権移転登記の訴を起して一審で勝つた。ABは控訴し、右売買契約に付てはBはAの無権代理をなしたものであつて、Aは之を追認した事実がないから無効であると主張し、仮にそうでないとしても、中間省略登記をなすことの特約は一種の債権関係であるから、この特約に基く権利そのものの譲渡がない限り、YからABに対し直接所有権移転登記の請求はできないと争つた。ところが控訴審けい属中に、BはAの共有持分を譲受けその登記手続をしたので、YはAに対する訴を取下げて、B単独の所有権移転登記請求の訴に変更する旨陳述したが、ABの代理人が右取下に同意しないので(民訴二三六条二項)、裁判所はAに対する請求は棄却し、次の理由によりBに対する請求を全面的に認容する旨一部変更の判決をしたものである。

理由

右売買契約がの同意を得ることを条件としてなされたに拘らず、同人の同意が得られない為無効であるとのBの主張に付ては、昭和三二年一一月一五日Aの持分がBに譲渡せられ、その登記手続のなされたことが当事者間に争がないのであるから、現在全面的に登記簿上の権利者となつたBとしては、仮にAの同意若しくは追認がなかつたとしても、相手方から民法第一一七条により履行を求められれば、この売買契約が当初から有効であるのと何等変りのない法律関係を生ずるわけである。従つてAの同意の有無は、Yの本訴請求を拒む事由となし得ないので、右主張は失当である。

次に中間省略登記の特約に付債権譲渡の手続がとられなかつたことに関する主張に付ては、かかる特約は売買契約中に含まれる附随的の約定にすぎず、之を次て右契約と別個の債権と見ることはできないから、売買契約に基いて取得した買主の所有権と共に、かかる特約に基く権利を他に譲渡するに際し、後者には別個に債権譲渡の手続を要するものと解すべきでないから、右主張を採用できない。

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